「さなきだに静かな秋の夜はふけて 老犬の声か細く響く」
大好きな岡本綺堂の小説には「さなきだに」がよく出てくる。現代では使われなくなった言葉だが、綺堂が活躍した明治の終わり~大正には使われていたのだろう。
古語辞典には「然無きだに:そうでなくてさえ」とある。
この言葉に出会ってからというもの、頭から離れず何かで使いたいと思い続けていた。
上記短歌はまさに「さなきだに」が使いたくて作ったようなもの。
それでなくても秋の夜はさみしさにやりきれなくなるのに深更進み物音すらしなくなる。そんなときに傍らで寝息を立てていた老犬が夢でも見ているのか、か細く鳴く・・・。若い時はあんなにも元気に吠えていた愛犬も年とともに鳴き声すら老いを感じるようになる…それは私も同じ。人生の秋がやってきて私も秋の寂しさにか細く声をたてるしかない。
0コメント