「暑き夜も眠られぬ夜もさもやらできりりと立てる池の蓮葉(はちすは)」

今の季節とは違う夏に作った歌だが、初めて作った歌だ。暑い日の光の中でもすっくと立つ蓮の葉に潔さと負けない心を感じた…ように記憶している。

 ところが・・・「蓮葉」を調べてみると「はすっぱ」という言葉になり、「下品な尻軽女」という意味がある。現代では使われない言葉だが、私が子供のころには「このはすっぱが・・・」などと聞いたことがあるような気がする。

 香に「蓮葉香(はちすはこう)」というのがある。夏に行われる組香で、 僧正遍昭の

「蓮葉(はちすは)の濁りにしまぬ心もて何かは露を玉とあざむく」

を下敷きにしている。

「蓮は泥水の中で育っていくが決して泥の汚れには染まらない(世間の汚れに染まらない心意気を持つ)。その蓮葉が葉の上にたまった水滴を高価な玉のように見せて私たちを欺いている」といったような意味の歌だ。ここでは蓮葉は「世間の穢れに染まらない」ものとしてとらえられている。私が蓮から受けたイメージ通りだ。

 夏は「蓮葉」だったが、冬は何といっても「月」だ。俳句の季語としても「冬三日月 寒月(かんげつ) 寒三日月 月冴ゆ(つきさゆ) 月氷る」などがあり、寒い冬空に「すさまじく」存在する月をいつくしむ風がある。冬の月の歌がなかなかできない。蓮葉と月。一言で言えば「凛とした風情」。理想とする生き方でもある。



誰そ彼

「せせらぎ」に投稿した短歌についてのメモ

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